TYOPRD TALK

02.11-03.0203.03-03.0603.07-03.12



04.8.10:宮崎

桜木町にて

 先日桜木町に行ってきました。駅からランドマークタワーに向かう動く歩道の両脇を何十枚ものポスターが埋め尽くしておりました。決して見慣れてはいな いけど見覚えのあるキャラクター。記憶を駆け巡らせる前に飛び込んできた「下水道」という文字。ああッッ!!「スイスイ」だ!!(04.7.27の嵐田 の文参照)
 はっきり言ってあまり興味はなかったけどトークのネタとしてと思い、開催してるパシフィコ横浜方面へ。近づくにつれ減っていくポスター。会場の人気の なさ。インフォメーションで聞いてみると「あ〜、7月31日で終わりましたよ〜」だって。
 「スイスイ」ごときに翻弄されてしまいました。きっと売っていたであろう携帯ストラップ、欲しかったな〜。



04.8.8:嵐田

ひまわり

 花束って、もらった瞬間に終わりに向かっていく感じがして、 うれしいけど、悲しい。 それは、誰かと出会えば、いつか別れがくるように。 はじまりは、いつだって終わりとセットだったりする。 花束も永遠に続くことはない。僕は、枯れていく花束の前であまりに無力だ。 弱っていくその様子を見ていくのは、いつも悲しい。 そして、すこしでも終わりを先延ばしにする努力は、もっと悲しい。 いつまでも枯れない花束があればいいのに。




04.8.2:嵐田

ひそかなブームか。

 電車の中で、また見たんだよ、下水道展の袋を持ってる人。 なに、これ流行ってるの?知らないの僕だけ?行ってないの僕のみ? このブーム、水面下で広がっているようです、下水道展だけに。



04.7.28:嵐田

エピソード3

 ついに「スター・ウォーズ エピソード3」のタイトルが発表された。 "Revenge of the Sith"、邦題は「シスの復讐」。 なるほどねぇ。そうだよなぁ。 これに関してウンチクを語ると、たぶん1時間くらいかかり、割愛するが、 ひとつ言うとしたら、およそ20年前につけたれたエピソード6のタイトル、 「ジェダイの復讐」についてだ。原題は「Return of the Jedi」。 するどい読者の方はお気づきかもしれないが、 ジェダイは本来、復讐はしないのだ。 ジェダイには恨みや怒りなどの復讐の感情があってはならない。 つまりジェダイの復讐ではなく、ジェダイの帰還。というのが正解だと私は考えている。 逆を言えば、今回のシスの復讐というのは、ダークサイドの象徴であるシスなだけに、 とても納得なタイトル。シスは復讐をするけど、ジェダイは復讐はしない。
 ま、それはこの際、置いておいて、いよいよ泣いても笑っても、これで終わりなんだわ。もう感無量。 すべてのサーガが、ここで完結。 新3部作を悪く言う人は世の中に多いが、 旧3部作の方がいいとか、あれはダメだとか、そういう問題じゃねーんだよ! そりゃ、テンションも上がりますわ。ああ、もう分かるかな、分かんねーだろうなあ。 世間の熱が、もう下がっていることも知っているさ。でもね、これで最後なのよ。 日本公開は、来年の7月。 待ちきれない僕は、エピ3発表記念に、今日はダースモールTシャツを着てみました。今更、エピソード1。 予想以上に人気がでなかったモール君。ダサいね、このTシャツ。




04.7.27:嵐田

下水道展

 電車の中で「下水道展'04」と書かれた紙袋を持っている人がいた。 「ああ、今年もそんな季節か・・・」って、おい! そんな展があるんだ。しかも、04ってことは毎年やってるんだよね。調べたら17回目だってよ! 人間で言ったら、もう高校卒業ですよ。反抗期も終え、もはや立派な大人です。 そもそも何がどう展示されてるのか、すごい気になるけど、行きたいとは全然思えない、この不思議な魅力。 ちなみにキャラクターは「スイスイ」。このドラえもんカラーの謎の生き物はなんなんだろうか。 足ひれ、ついてんよ。きっと携帯ストラップとか売ってるんだろうなあ。
 横浜で開催されている下水道展。もう、ツッコミどころだらけです。 キャッチコピーが、「見えにくい下水道を見えるように」。なるほどねぇ。 確かに見えにくいもん。ああ、もう下水道展の虜です。 世の中には知らないとこで、知らないことが行われているんだね。




04.7.24:嵐田

まつり

 夏は、いつの間にか来て、いつの間にか去っていく。 僕は上から、通りすぎていく神輿を見ていた。 窓の向こうの歓声を想像して、僕は遠い夏に思いを馳せていた。




04.7.10:嵐田

「小悪魔な女になる方法」

という本を電車で読んでいる女がいた。 もちろん、ブックカバーもなしで、白昼に堂々と。 さて、どこからツッコミを入れればいいだろうか。 もう書くのも面倒くさいくらいだ。 ツッコミどころ満載にも、ほどがある。 ああ、もうこんなことを思っている時点で負けてる気がしてきた。 だって、もう分かるでしょ?この感じ。 なんつーか、修復不可能というか、 きっと彼女と僕が分かり合える日なんて、一生こないんだろうな。 もはや、逆に、すがすがしい気持ちにすらなってきた。 僕は彼女を応援するよ。君は悪くない。君は天使のように清い心を持っているよ。 そして、僕は彼女の幸せを祈って、電車を下りた。「立派な小悪魔になれよ。」



04.7.7:藤沢

七夕

エリートは言う。無謀なオチコボレにはなりたくない、と。
オチコボレは言う。平凡なエリートにはなりたくない、と。

ぼくら思う。たとえ一瞬でも、ナニカを失いたくない、と。
だから願う。たとえ一瞬でも、永遠を夢見て。



04.7.1:藤沢

上の空

あなたが、どんなに、正しい意見を撒き散らしても、
隣の人が、どんなに、しあわせな歌を奏でていても、
全世界が、どんなに、清潔な世界を築いたとしても、
今の僕が、どんなに、間違っていても。せめて今は。



04.6.29:藤沢

上空

もうすぐ夜だっていうのに、空にはまだ、さっきまでの青が残っていて、なんだか不気味だったんだ。粘土に爪を立てた跡のような月が、ちっとも夜空に馴染んでなくて、不安になったんだ。いずれ、僕の思考も、何者かに支配されて。



04.6.22:嵐田

「誤魔化す」

 誤った悪魔と化す。と書いて、誤魔化す。 つまり「ごまかす」とは、できそこないの悪魔になるってことか? 完全な悪魔だと、ごまかすっていうか、だますってことになるんだろうな。 プチ悪魔くらいのレベルだと、だましたつもりが、ちょっとバレちゃったりして、ごまかしてる感じになるんだろうな。 なるほどねえ。言葉って奥が深いねえ。また、今日も、ひとつ賢くなってしまった!
と窓の外を眺めながら、ぼんやりとそんなことを考えていた。
誤魔化しきれなかった重い空気の中で。



04.6.16:藤沢

イメージ

 すっかり本来の機能を失っている回転式の扉を、無理やり押し回そうとしている少女。ちょうど東西南北の方角を指し示しているようにも見える4枚の扉には、すべてに「閉鎖中」の貼り紙。まだランドセルも似合わないだろう少女にも、その貼り紙の意味ぐらい、それとなく悟れるはずだ。頑固な扉たちは、微動たりしない。でも、頑固なのは少女も同じで、頼りない両腕に入れっぱなしのチカラを休めようとしない。
 そのとき、ぼくは、想像したんだ。少女と一緒になって、扉を、扉を、扉を、扉を、押し回そうとする、ぼくの姿を。ヒーローじゃないけど、スーパースターじゃないけど、ぼくは、少女の味方になったんだ。気配に気づいた少女の視線は低すぎて、うまく目は合わせられなかったけど、「せーの」たぶんそんな掛け声で、ぼくら、ひとつになれたんだ。まずはね、少しだけ、ほんとに少しだけ、扉が動くんだ。そしてね、ついにね、まわりはじめるんだ。ぐるぐるぐるぐる、風を起こして、びゅんびゅんびゅんびゅん、音を立てて、まわりつづけるんだ。ぼくら、うれしくて、たのしくて、汗だくで、泣きべそで、まわりつづけるんだ。4枚の扉に挟み閉ざされた、少女と、ぼくと、希望と、夢と。追いつけっこないのに。縮まらない距離と知っているのに。そのとき、想像できたんだ。ぼくには、想像できたんだ。



04.6.10:藤沢

コーヒーの罠

たまにする失敗。たまに掻く恥。

コーヒーに疎い僕は、カプチーノとかと間違えて、
エスプレッソを注文してしまうことがある。

出てきて、びっくり。「小っちゃ!」
飲んで、びっくり。「にがっ!」



04.6.9:藤沢

命題

あてもなく感慨深くなったついでに巡らせた想いの途中、
道草を食うように手間暇かけて固めた決意を、
いつまでも忠実になぞり、いつまでも折れることなく、
いつまでも忘れ去らない、そんな執念に憧れるなら、
まずは、安易な日常に垣間見えた光の拡大を、
たとえば、週末に芽生えた出来心の成長を、
つまりは、いつまでも喰い止めなければならない。



04.6.8:嵐田

フィクション.1

 ただただ強い日差しの下。まっすぐに歩いていた。 知らない道。知らない街。 その先には海があるらしく、 別に用があるわけでもない男は、海に向かって歩く。 海からの風を受けて、斜めになった松の木が、海の方向を示している。 湾岸線を渡ると、そこには砂浜が広がっていた。 ずぶ、ずぶと砂に足が埋まっていく。 沈みきる前に、次の足を出さないと、その砂浜に自分が沈んで行くような気がした。 なにか罠から逃げるように足早に進んでいく。 陸と海の境目に立ってみる。正確に言うと、陸と海の境目のちょっと陸側に立ってみる。 目の前に、自分には絶対に越えられないラインが、この世の端から端まで引かれている気がした。 ふと、海に花束を投げる映画のシーンを思い出す。 「結局、自分では、そのラインを超えられなかったんだろうな。」 人類は、遥か昔、海からやってきたらしいが、 都合が悪くなると、海に頼りたくなるのかもしれない。 夢に破れて実家に帰る若者のように。 「結局、勝手なことを言っているだけなんだ。」 なんか気の利いたセリフでも残してやりたかったが、 何も浮かんでこなかった。
 当たり前のように寄せては返す波。繰り返し、繰り返し。 誰もいない時は休んでいてくれたらいいのに。 遠くの方に船が何隻か浮かんでいる。たぶん、1、2隻は、浮かんでいるフリなんだろう。 今日も、当たり前のように、寄せては返していく現実。 男は、ただただ見ていることしかできなかった。



04.6.3:藤沢

04.4.13:嵐田「どうでもいいこと。」参照

 以前、嵐田 光の文章で、美容院の会員カードの名前が「嵐田 夫」と書かれていた、という話があった。実は、僕も同じ美容院に通っていて、担当の美容師まで同じ人。かれこれ10年近く、髪の世話をしてもらっている。

 予約の5分前に到着。雑誌をぺらぺら、待たされること20分。いつもの美容師に、いつもの髪型を告げる。シャンプー。カット。いつもの話題。マッサージ。スタイリング。いつもの流れ。レジに誘われ、荷物を受けとり、いつもの金額を払う。貯まるポイント。遠すぎるゴール。そのとき、僕は、見てしまった。そのとき、僕は、気付いてしまった。私、藤澤 朋幸の会員カードの名前が、「藤澤 明幸」になっていることを。やられた、と思った。ふたりして、ハメられていたのだ。この店のスタッフは、東京パレードに恨みでもあるのだろうか。何食わぬ調子で、僕を見送る美容師。いつもの笑顔。結局、何も言えずに店を出た僕は、嵐田よりも、器が小さいのかもしれない。



04.6.2:藤沢

ねえねえ、

エスカレーターの「ステップ」と「ベルト」ってさ、
おんなじ速さで動いてるようで、実は微妙に違うよね?
きもーち、「ベルト」の方が速いよね?
そうだよね? オレ、あってるよね?

あとあと、

テレビの新作ドラマに、柴田恭兵が出演してると、
「あれ? これ再放送?」って、思っちゃうよね?
たとえ、ゴールデンにやってても、思っちゃうよね?
そうだよね? オレ、あってるよね?



04.6.1:藤沢

今日、思うこと。

だから、明日になれば、思わないこと。かもしれない。

僕は、いろんなことを思う。僕だけじゃない。君も、いろんなことを思う。僕だって、負けてない。君よりも、いろんなことを思ってやる。君は、あきらめたかい? そんなはずはない。もっと、たくさん、もっと、はやく、いろんなことを思おうとしてる。それはもう、僕の想像を遥かに絶するようなことを思ってる、と思ってるに違いない。じゃあ聞くけど、僕が今思ってること、君は見破れるかい? 君が見破ったことなんて、僕はもう、とっくに、思ってやいないのさ。僕が君を裏切るスピードは、君が僕を信じるスピードじゃ、追いつけやしないのさ。しばらく、僕だけ何も思わず、やり過ごそうか。そうすれば、近いうちに、わかりあえるかも。なんてね。



04.5.21:嵐田

ナイトクルージング

 台風が過ぎ去った朝、世界は驚くほど、青かった。 夏になると、フィッシュマンズが聞きたくなる。 僕は、ヘッドフォンステレオに、CDをいれ、街に出る。 ナイトクルージング。

 走る窓から街を眺めていた。 ストロボのように、次々と太陽が僕を照らす。 ジオラマのような景色。切り取られたコトバの断片。 走り出す車。立ち止まる人。原因不明の頭痛。 ウソのような高層ビル。遠くの空に、飛行機が飛んでいった。 毎日は、ごく当たり前のように奇跡を繰りかえす。 笑ってしまった。僕は、泳いでいた。気づかない、無意識と無意識のすれ違い。 手応えのない日常を、必死に掻いている。

 台風2号は、いろんなことを連れ去っていた。 リセット。世の中が、すこし幸せそうに見えたんだ。 浮いては、沈んで、沈んでは、浮きあがる。 ゆっくりと、今日が進んでいく。
「窓はあけておくんだ いい声聞こえそうさ」



04.5.11:嵐田

ひまわり  

花束をもらった。ひまわりの花束。 ちょっと、めでたいことがあってね。 普段、花束をあげることはあっても、 もらうことはないから、どうしていいのか分からず、なんか不思議な感じだった。
 僕は、ひまわりの花束が好きだ。 とくに、ひまわりは季節外れであればあるほど、ステキだ。 ちょっと、アホっぽいところとか、仲間外れな感じとか、なんかやり過ぎてる風なのもいい。 花のくせに、儚くないのもダサくて、あり。 僕は、毎年、ある女性の誕生日に花束を贈っているんだが、 飽きもせず、毎年、季節外れのひまわりを贈りつけている。 もはや、自分が好きだから贈っているとも言える。
 そんな、ひまわりが、僕の手元にやってきたわけだが、 贈り主いわく、なんとなく僕には、ひまわりだったらしい。 おいおい、オレがあの黄色の元気印、ひまわりかよ!全然、違うじゃん。 と思ったが、なんか嬉しかったりもした。 届くはずのない太陽を目指し、すくすくと育つひまわり。はっきり言って、アホだ。 でも、たぶん僕は、ずっと、ひまわりに憧れている。




04.5.8:嵐田

5次会  

同級生の結婚式があった。
幸せそうな2人。祝福する人々。 それは、あまりに現実的ではない空間で、 僕は、なんだか酔ってしまった。

久々に会う同級生たちは、 変わってしまったようで、何も変わっていなかったし、 何も変わってないようで、全てが変わっていた。 あまりにも、それぞれな僕たちの日々は、 相変わらずの平行線。 ただただ「あの頃」の話ばかりをしていた。 僕は、グラスの中の思い出を、カラカラと鳴らしながら、 記憶の中を、漂う。ただ酔うだけ。 ひとり帰り、ふたり帰り、そして朝が迎えにきた。 最後まで残った僕は、ふらふらと現実を歩く。 だけど、なぜか、全てがウソのように思ったんだ。 僕は、いつまでも酔っていたかった。 ふと「卒業式」という言葉が浮かんだ。 ねえ、僕には、教えて欲しいことが、まだまだ、たくさんあるんだ。 「青春」なんて言葉で、すべてを片付けたくないんだ。




04.4.28:藤沢

僕のピース  

どうだい? なかなか決まってるだろ?
チョキじゃないよ、ピースだよ。
ピースはね、さりげなくするもんじゃないの。
指の先までチカラを込めて、思いっきりしなくちゃ。
平和とか、戦争とか、まだまだよくわからないけど、
あなたに届け、僕のピース!




04.4.22:藤沢

紳士

駅のトイレで、用を足していた。小さいほう。
僕の隣で、同じく用を足している見知らぬ男。
ビシッと黒のスーツを決めている。40歳前後。
電車が駅を去っていく音がする。
静けさを取り戻したトイレ。沈黙がつづく。
すると、突然。
『ブッ!』スーツの男が、大きなオナラをした。
「えっ?」僕は思わず、声に出して反応した。
目が合う2人。お互い無表情。きまずい。
時間が止まる。オシッコも止まる。
「す、すいません……」
そう謝罪したのは、僕だった。



04.4.16:藤沢

「あっ」

やばい。ひかれる。バスに。僕が。たぶん。
バスは渋谷行き。僕は天国行き。言ってる場合じゃない。
よかった。無事だ。ひかれなかった。僕は。ぜったい。

 今日の僕は、コンタクトを付けていなかった。ひさびさの裸眼生活。ぼやけた景色が、なんとも懐かしい。でも、べつに不自由な暮らしを楽しんでいたわけじゃない。忘れてたんだ。コンタクトをするのを。忘れたんだ。何年かぶりに。気づいたときには、もうずいぶんなところまで来ていて、わざわざ引き返すのが面倒だった。「まっ、いっか。今日ぐらい」
 思えば、僕がコンタクトを付けはじめたのも、バスがきっかけだった。ある日、真夜中の道を歩いていたら、バス停の時刻表にぶつかった。それが、きっかけ。でも、バス停じゃ死なないけど、バスは死ぬって。いやいや、まじで。ほんと、あぶなかった。しばらくぶりに崩れた習慣が、危うく僕の人生をも崩すところだった。習慣って、大事だね。大事だから、習慣になってるんだね。今夜は、コンタクトを付けたまま、寝ることにします。夢の世界で、死なないように。



04.4.14:藤沢

パトロール

 「ハロー!」ぼくは、振り返らなかった。「ハロー!」今度は、素直に振り返った。でも、これが失敗だった。そのまま聞こえなかったふりをして、足早に駅へと向かえばよかったんだ。ぼくの知り合いに、こんな陽気な挨拶をしてくるヤツはいない。しかも、必要以上に発音が良い。お手本のような挨拶だった。そう、外人さんである。ほんとは「ハロー!」じゃなくて「Hello!」だったわけだ。敵は、若い白人女性ひとり。あらあら、ぼくより肌が白いこと。そんな関心をしている場合じゃない。振り返ったからには、何か言わなくちゃ。
 「なんすか?」寄りによって、なんでこんな砕けた日本語をチョイスしたんだろう。気の知れた先輩が相手じゃないんだから。まあ、英検4級の実力は、こんなもんである。でも、ぼくは、ちっとも怖くなかった。ぼくには安心材料がたくさんあった。ここは日本だし、ぼくは日本人だし、敵もそれは承知のはず。いくら国際社会だ、国際交流だと謳われていても、意外と世間は無関心だったりする。それに、万が一、敵が濃度100%の英語を武器に向かってきたとしても、話中に見え隠れするキーワードさえ拾えれば、解決への糸口となるし、それぐらいなら乏しい受験英語でもお釣りがくる。なんてことはない、どうせ道を尋ねられるだけだ。この辺の地理に精通していなくても、すぐそこに交番がある。ほら、退屈そうな警官があくびを我慢して突っ立っているじゃないか。平和な日本が、ぼくを守ってくれるさ。さあ、もう一度、言ってやれ。
 「なんすか?」ぼくの勇気あるコトバが、虚しく日本に響いた。警官は、口の中で、ひとつ、あくびを殺した。敵は、落ち着いた様子で、でもいくらか早口に、ぼくに訴えかけてくる。英語だった。しかも、ドロドロの英語。濃度100%どころか、それはもう固体に近い。だから、ぼくは敵以上に落ち着くことにした。さっき並べた安心材料を思い出すんだ。あれ、なんだっけ? なぜか関係ないことばかり思い出してしまう。ここで思い出し笑いでもしたものなら、ぼくは変態とみなされて、あの警官に逮捕されてしまうかもしれない。いや、そんなことはどうでもいい。まず、キーワードを見つけるんだ。目を閉じれば、きっと浮かびあがってくる。でも、ぼくが目を閉じた隙に、キスでもされたらどうしよう。敵が育った環境を考えると、ない話でもない。いや、そんなこともどうでもいい。早くなんとかしないと。どうやら道を尋ねられているわけではなさそうだ。ただ、そこまではノーヒントでたどり着いたが、その先が進まない。まったく、少しは手加減して欲しいものだ。まさか、極端に色白のぼくを見て、白人と勘違いしたわけでもあるまい。てか、ほんとに英語か? そう疑いたくもなるぐらい、さっぱり何を言っているのか分からない。ヒーローでも呼びたい場面だが、やってきたヒーローが英検4級だったらどうしよう。チェンジとかできるかな? だから、そんなことはどうでもいいんだ。さあ、どうする藤沢少年。逃げるか? でも、あの警官が追ってくるに違いないぞ。彼らには逃げるモノを追いかける習性があるんだ。敵は、相変わらずの調子で、固体の英語を吐き出している。
 「なんすか?」間が耐えられなくて、また言ってやった。もう何度でも言える。自分の持ちギャグのごとく連発できる。会場は、しらけるばかりでも、今はこれしか頼れるコトバがない。本来なら、簡単な英単語でも並べて、次なる展開を狙えばよいのだろうが、なぜかそこには頼りたくない。敵は他にもいるような、そんな気がして、意味もなく塞ぎこみそうになる。警官は、先輩警官の目を盗んで、今度は生きたあくびをした。
 「ハロー!」とは違ったが、それに似たような陽気な挨拶。発音が良すぎて、ぼくはうまく聞き取れなかった。振り返ると、呼んでもいないヒーローがそこにいた。そして、ぼくに目で合図をしてから、ぼくの敵に、液体の英語で臨んだ。ヒーローは、すぐに、ぼくの敵の味方になった。ぼくの敵は、ぼくに向かって「サンキュー」と言った。「Thank you」ではなく「サンキュー」だった。ぼくは、駅へと急いだ。警官は、交番から姿を消していた。



04.4.13:嵐田

どうでもいいこと。

ほんと、どうでもいいことなんだけど。 私、嵐田 光は、どうも器が小さいのか、気になってしまう。
 美容院で、また僕は小さいことをしてしまった。 会員カード。ポイントが貯まった。ワックスをもらう。 そして、新しいカードが作られる。 古いカードが新しいカードに変わる。 僕は、古いカードで、ひとつどうしても気になっていたことがあった。 カードを見る度に気になってた。すごく小さいことだから、僕は毎回それを見て見ぬふりした。 新しいカードに、古いカードのデータを書き移す店員さん。 僕は、ついにガマンできず、言ってしまった。器の小さい僕は言ってしまった、
「ほんと、どうでもいいことなんですけど、
僕の名前『嵐田 夫』じゃないです。」



04.4.12:藤沢

なまえ

どーでもいいことなんだけど、
僕と同じ「フジサワ」という苗字で、
かわいい女の子を見たことがない。

どーでもいいことなんだけど、
僕と同じ「トモユキ」という名前で、
かっこいい男の子を見たことがない。

今までに、僕が見かけた、
フジサワさん、ごめんなさい。
トモユキくん、ごめんなさい。



04.4.10:藤沢

春風

 まっすぐな道を、まがりくねって歩いてゆく。たよりない景色を、ひとつ、ひとつ、たくましい想像力で、蹴ちらしてゆく。ひこうき雲は、空よりずっと、空よりもっと、高いところを飛んでいる。にじんでかたまった夕焼けは、かさぶたみたいで、なんだかきたなく思える。おわりのはじまりは、もう、すぐそこ。いやな予感を背にして、いちもくさんに走りだす。逃げるように、追いかけるように、息を切らして、走りつづける。まっすぐな道は、あいかわらず、まっすぐに伸びている。やさしいひとの、手の込んだおとぎ話に、足をとめる。いたずらな罠に、わざとひっかかって、ちからいっぱい感動する。はしゃいでなんかいないさ。だれの味方でもないのさ。ぼくらに、春風が、そっと、吹きつける。



04.4.5:嵐田

健康

思いきり、風邪ひきました。 いや、もうひく前から、ビシビシとその気配は、感じてたんだよね。 風邪になる前の「あ、明日、オレ風邪ひくな。」って、あの感じは、なんなんだろうね。 フラれるの分かってて、告るような感じ。マゾだね、マゾ。 で、見事に風邪をひき、見事にライブに重なり、見事に悪化しました。
 いやぁ、健康って大事だよ。健康じゃないと、なんもできないもんね。 改めて実感。悪い夢ばっか見るし。ダウンジャケット着てライブやって、汗だらだらになる夢とかさ。 他にも、忘れたけど、しょぼい夢たくさんみたよ。 健康であろうと思った。世の中が健康ブームなのも納得ですよ。 でもさ、健康みたいな当たり前のことがブームになる世の中って、どうなのさ。 いずれ「幸せブーム」とか「寝るブーム」とか来ちゃうんじゃないの? いや、「生きるブーム」くらい到来しちゃうかもしれない。 もはや、当たり前なことがブームになってしまうわけよ。 どうなのさ、現代人。どうなのよ、自分。 ああ、私の机の上には、多種多様のサプリメントが。ああ、健康でありたいね。



04.3.30:嵐田

ゆっくり消える虹みたく

電気の「虹」をずっと聞いてた。 何十回も、朝が来ても、ずっとくりかえして。 「ぼんやりとただ意味なく」。
 春には、出会いとか別れとかたくさんあって、 きっとアナタのまわりにも、そんなんがゴロゴロあるだろう。 悲しみや不安が、期待や希望を覆いつくすことも。 きっと分かっている。きっと気づいてる。きっと知っていた。 こんな日が来ることを。
「ありがとう」誰かがつぶやいた。
「さようなら」誰かが遠くを見ていた。
僕たちは、願う。それぞれの願いを、同じ空の下で。 まばたきの間に消えてしまった景色。 ポケットに大切なモノをひとつ。 いつか振り返ればいい。 新しい日々は、もう始まっているから。



03.3.28:嵐田

くりかえす。ふりかえる。  




04.3.3:嵐田

クッキー

ちょっと、振りかえると、ここんとこいろんなことがありました。 結構、落ちこむこととかもありました。 とりあえず、平気なふりをして、前だけを向いていました。 なんか、うまくいかんことばかりですわ。 いつか全部うまくいくだろう。そんな風に思ってたのに。 いくつになっても、いまいち抜けきれない。 果たして僕は前進しているのだろうか。
 2月は、ほんと必死で、なんかよく覚えてません。 机の上に全く記憶のないクッキーが置いてあったり。 いまだに、このクッキーがナニモノなのか分かりません。 とりあえず、食べてみましたが、その答えは分からないまま。
 なんていうか、みんな大変なことばっかりなんですよ。 みんなそれぞれに大問題を抱えていて。 僕がそんな誰かにできることなんて、無責任なことばかり。 僕の行為なんてもんは、このクッキーと同じで、 誰かの机の上に置きっぱなしのままなんだな。 でも、気がついた時に、誰がくれたかすら分からなくていいから、 その人がなんとなく食ってくれたらね。 なんて考えも、押しつけがましいか。
 さて、3月。春うららかな、何もない午後。 散らかしたままのテーブルは、さて置き。 ちょっと、どこかに出かけましょうか。



04.2.23:嵐田


僕は、車で走っていた。
まっすぐな道を、どこかに向かって。
大きな川を渡る橋。
その先の向こうへ。僕は、アクセルを踏む。
流れる景色の中、僕は確かに見たんだ。
その川をプカプカと浮かんでいる、タマちゃんを。
ごく当たり前のようにそこにいる、タマちゃんを。
僕は、立ち止まることなく、進む。

 朝めざめた僕は、久しぶりの友人に連絡をしてみた。
そういえば、元気にしてたかい?



04.1.23:藤沢

冬の疑惑

冬って、こんなに寒かったっけ?
毎年、ちょっとずつ寒くなってる気がする。
僕らにバレないように、ちょっとずつ。



04.1.11:藤沢

太陽

 見上げろと言わんばかりの青空の下、僕は素直に空を見上げた。 「青いだけの空」そんな悲しい形容をしたくなるような空だった。 無地の空を彩るべき、たとえば浮かぶ雲、架かる虹、飛びまわる鳥達の姿はない。 せっかく吹き抜けた風も、無色透明じゃ何も務まらなかった。 「はぁ」溜め息が似合う青空も珍しい。青空の青は、蒼ざめた青。 「雲ひとつない青空」とは、味気ない空への皮肉なのかもしれないと思った。
 目のやり場に困った僕は、青空の片隅でポツンと輝く太陽を見た。 意識して太陽を直視したのは、いつ以来だろう。「理科」「観察」「宿題」懐かしい単語が頭をよぎる。 久しぶりの太陽は、いつかの太陽よりも眩しくなくて、そのままずっと目を逸らさずにいられそうだった。 あの頃、あんなに眩しかった太陽は、かつての輝きを失ってしまった。いや、そんなはずはない。 きっと、輝きは、あの頃のまま。変わったのは、僕の覚悟。僕が太陽を見る覚悟だ。 そう確信した瞬間、それ以上の分析をするのが怖くなって、やめた。 そして、わざとらしく太陽から目を逸らし、ぎこちなく顔を下ろした。 チラつく残像が、僕の歩みを邪魔する。結局、太陽は、何の象徴なのだろうか。



04.1.9:藤沢

リモコン

チャンネルを変えたかった。
でも、リモコンが見当たらなかった。
わざわざテレビ本体のボタンを押しにいくのは面倒だった。
だから、チャンネルは、そのまま。
だから、リモコンも、そのまま。



04.1.1:藤沢

新しい夜明け

 大晦日の夜。待っていても何も始まらないはずの世界と、年明けの瞬間を優雅に待っている僕らとの間に、矛盾は生じないのだろうか。 僕らは、束の間の休息を装って、あたかも誰かに許されたかのように、待つという行為に微塵の抵抗も見せない。 それは、特別な日を、特別に過ごすことで、退屈をごまかしているだけのようにも思える。 もし、この流れに逆らって、僕らを横目に、何かを始められる人がいたら、その成功にケチを付ける勇気はないだろう。 始まりは、待つものではない。ならば、僕らが待っている年明けに始まりは存在しないはず。 あるのは、希望でも、失望でもない、続いている日々に引かれたラインと、そのラインを跨ぐ作業。 それを、めでたいと思うのは、ちょっと無理がある。 めでたいのは、年が明けることよりも、年明けを大袈裟に解釈している僕らの方かもしれない。
 年明けのとき。年明けをどう実感していいかも分からず、なんだかぎこちない。でも、僕らは知っている。 本当の年明けは、夜明けと共に訪れることを。夜のままじゃ何も終わらせられないし、朝を見ずして何も始められない。 僕は、この「年明け、夜明けまえ」という、どっちつかずの時間が、1年の中で最も無責任でいられる時間な気がする。 ザックリと振り返ってみたり、やっつけに目標を立ててみたり、そこには過去と未来しかなくて、今を問われない気がするから。 でも、ときどき、ちょっとだけ難しいことを思ってみたりもする。 そうでもしないと、今、ここで、こうして、佇んでいることを否定されてしまいそうで。 とか、そんなことも考えず、時間の波に、ゆらり揺られて。陸地に打ち上げられるまで、ゆらり流されて。 もしも、一定に刻む時間のリズムに乱れが起きるとしたら、こんなときかも。 なんて、可能性の話をしたくなるような不思議な時間である。
 夜明けのとき。今日の朝は、昨日の朝と同じで、すでに明日の朝をも予言できてしまいそう。 勢いよく飛び出した世界は、冒険とは程遠い世界。 僕らは、何も変わらない日々と、繰り返すだけの景色に驚愕することもなく、いつもの生活に戻る。 今日も、どこからか、手持ち無沙汰な毎日を嘆く歌が聴こえてきて、思わず僕ら、共感するだろう。 「こんなはずじゃなかった」とか口ずさみながら、本当は案の定の日々が続いていても。 何も変わらない日々の途中。繰り返す景色と景色の繋ぎ目。今が過去になる瞬間の1つ。 きっと、夜明けに意味はないけど、何かを変えようとする僕らを、少しでも後押ししてくれたらと月並みに願う。 どうせ意味がないなら、うまく利用して、思い込んでしまえばいい。始めたり、やり直したり、僕らが動きやすいように。 僕たちの日々。その殆どは、特別な意味を持たずにやってくる。年明けにやって来た夜明けが、新しい夜明けでありますように。 明けましておめでとう。



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